減らない振り込み詐欺

減らない振り込み詐欺

去年の警視庁管内の刑法犯の認知件数は、10年連続で減少傾向を示したものの、振り込め詐欺は架空の社債購入名目などの振り込め類似詐欺をあわせると、被害件数が3割増加するなど深刻な状況が続いている。

警視庁によると、12年1月から11月までの刑法犯の認知件数は、前年同期比7.1%減の15万8544件と、10年連続の減少傾向であることがわかった。しかし、振り込め詐欺と社債購入名目などの振り込め類似詐欺をあわせた被害は、金額・件数とも去年を大幅に上回る見通しで、深刻な状況が続いている。全体の件数(1月~11月)は、前年の同じ時期に比べ、約29%増加、被害総額は約71億3379万円と8割超増えている。

一件あたりの平均被害額は、11年の244万円から332万円と増加。1000万円以上の被害も115件と、11年の38件に比べて激増していて、被害が高額化する傾向が一層強まっている。これは、金融機関から振り込ませるのではなく、自宅などに「受け子」と呼ばれる現金の受け取り役が訪れ、現金を手渡しで受け取る手口が増加していることが背景にある。

また、役所などをかたって「医療費や税金が戻る」などと、ATM(=現金自動預け払い機)に誘って電話による指示で振り込ませる手口「還付金詐欺」の被害も、一時は下火になっていたものの、12年は382件(11月まで)と前年の同じ時期の11件に比べて急増している。

警視庁は、対策として金融機関の窓口での声かけと、「だまされたふり作戦」による「出し子」の検挙を大きな柱に挙げている。まず警視庁は、金融機関に対し、高齢者が高額な現金を引き出したり、高額な振り込みをしようとしたりする際に窓口の担当者から「詐欺」ではないかと注意を呼びかけるよう協力を求めている。こうした「水際対策」で、12年は前年を上回る911件、29億円余りの被害を防止できたという(11月まで)。

もう一つは通称「だまされたふり作戦」と呼ばれるもので、振り込め詐欺と気づいた時点で警察に通報してもらい、捜査員を迅速に派遣する一方、捜査員の指示で被害者がだまされたふりを続けることで、自宅などに現金を受け取りにきた「受け子」と呼ばれる犯人を検挙する対策だ。「だまされたふり作戦」で12年は、すでに前年同期と比べて約1.5倍の260人を逮捕している(11月まで)。

しかし、警視庁は、「受け子」の逮捕をきっかけに犯行グループ全体への突き上げ捜査を目指すものの、実際にはたどり着かないケースが大半だ。これは、犯行グループが捜査が全体に及ばないよう、経済的に困窮した人物や若者などを1回限りの「受け子」として雇うケースが多く、「受け子」には依頼者の素性さえ伝えていないため。

この他、「犯罪インフラ」と呼ばれる架空名義の携帯電話や口座の売買などの摘発や、犯行グループのアジトの摘発を強化することも課題となっている。

また、被害防止に向けた広報も課題の一つだ。これまで警視庁は、詐欺の直接のターゲットである高齢者を中心に注意を呼びかけていた。しかし、振り込め詐欺の被害者へのアンケートを分析した結果、以前、警察官などから振り込め詐欺への注意喚起をされていたにもかかわらず、被害に遭っていた実態がわかった。

そこで現在、警視庁は、息子や孫の世代として30歳代から40歳代への広報を強化していて、親、家族の財産を家族の絆で守ってほしいと呼びかけている。具体的には「家族の間で合言葉を決めておき、日頃から電話の際に確認する」「振り込め詐欺の手口を親に教え、自分はそのようなことは絶対にしないと伝えておく」「『携帯電話をなくした。番号が変わった』との電話を受けたら、元の番号にかけ直すか、勤務先に電話するよう伝える」などの対策をすすめている。
撲滅の決定打が見いだせない振り込め詐欺捜査について、捜査幹部の間では、薬物や銃器犯罪など限定して認められている通信傍受法の対象に振り込め詐欺も入れてほしいとの切実な声も聞かれ、実際、新しい時代の刑事司法のあり方を検討する法制審議会の特別部会でも今後議論される見通し。

 

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