錬金術

医療法人理事長のあきれた 錬金術

診察したかのように装って診療報酬をだまし取ったとして、奈良県警捜査2課などは詐欺容疑で奈良市南登美ケ丘、精神科医で医療法人「光優会」(同市)理事長、松山光晴容疑者(54)を逮捕した。法人職員の保険証番号を悪用してウソの病名や治療内容などを書き込む手口で、“患者”をでっち上げていたという。奈良警はほかにも「高額療養費」制度や障害者の自立支援給付金など数千万円をだまし取った疑いもあるとみて、“錬金術”の全容解明を進めている。

元従業員の保険証番号を悪用

奈良警によると、松山容疑者は自らが運営する「クリニックやすらぎ八木診療所」(同県橿原市)で唯一の医師として、精神科や心療内科の診察にあたっていた。医療法人の理事長を務める一方で、一般社団法人「光優会」理事の肩書も持ち、同法人傘下のクリニックや事業所を実質的に経営していたという。

松山容疑者は、こうした「光優会グループ」傘下の事業所で以前に勤務していた男性の保険証番号を悪用。平成20年1月~21年9月の21カ月間にわたり、診察したとする虚偽の「診療報酬明細書(レセプト)」を県国保連合会に提出し、計360万円の診療報酬をだまし取ったとされる。奈良警が10月に詐欺容疑で逮捕し、松山容疑者は11月に同罪で起訴された。

その後、同じ手口で5人の元従業員の保険証番号を悪用していたことが判明。診療報酬計約1400万円をだまし取ったとして、詐欺容疑で再逮捕。妻(31)と男性事務長(53)も共犯として書類送検された。

捜査関係者によると、松山容疑者は「鬱病」などと勝手に病名を付けてレセプトを作成していたが、名前と保険証番号を悪用された男性らは「一度も診察されたことはない」「鬱病で通院したことはない」などと話しているという。

松山容疑者は県警の調べに対し、「患者だと認識していた」と容疑を否認しているという。

これまでに奈良警が押収した資料の中には、レセプトがあってもカルテが存在しないケースもあった。さらに、職員が光優会グループに就職する前の分についても、診察したと装って診療報酬を請求していたことがわかった。捜査関係者は「就職する際には、それまでの保険確認のために保険証のコピーを取ることもある。(松山容疑者は)こうした情報を悪用した」とみている。

「病院がこんなとんでもないことをしていても、本人たちに通知が届かないので気づかない。警察の捜査が及んで初めて悪用されたことを知った人もいる」